すべての医師に緩和ケアの視点を

緩和ケアという分野は医学の中でも新しい分野で、多職種で行う横断的な医療です。医師だけががんばっても良い緩和ケアは提供できません。看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士などさまざまなスタッフが協力し、患者さんやその家族をサポートします。

信州がんセンターでは、緩和ケア教育の充実、地域と大学を結んだ緩和ケアシステムの構築、そして緩和ケアの研究の充実を目標にしています。

2007年に成立したがん対策推進基本計画により、「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により、緩和ケアについての基本的な知識を習得すること」が目標として掲げられ、全国各地で医師や看護師に対する緩和ケア研修会が開催されています。一方、緩和ケア、終末期医療は医学教育モデルコアカリキュラムに謳われているものの、医学生、研修医に対する教育は確立していないのが現状です。当センターでは、医学生、研修医に対する体系的な緩和ケア教育に力を注ぎたいと考えています。

大学、地域の現場を問わず、どの科を専門にしていても、長野県の医師全員が同じ緩和ケアの視点を持って患者さんを評価し、ケアできるようになることが大切です。そのためには、まず地域で働く先方の協力を得て、内科医、外科医、総合医(家庭医)、精神科医など、多くの分野の医師が緩和ケアに関与できるシステムを構築することが急務なのです。 緩和ケアは高齢者のケアにも応用できるので、将来的には、緩和ケア専門医を育成して県全域に送り出す必要があると考えています。信州がんセンターでは、患者さんが地域の病院へ移る前に痛みに対する対処法を明確にすること、そして、地道に啓蒙活動を続けることで、地域による格差解消に一歩一歩取り組んでまいります。

緩和ケアは患者さんや家族のニーズにあわせて、テーラーメイドの臨床を行わなければなりません。そのため、学会発表や論文もどちらかというと症例報告が多く、サイエンスというよりもアートになりがちです。 当センターでは、科学的な知見に基づいた臨床、基礎分野での緩和ケアの研究を目指し、将来的には多職種が連携して研究できればと考えています。

長野県の皆さんに、ここで医療を受けてよかったと思っていただけるような緩和ケアを提供できるよう、精一杯努力したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

信州がんセンター緩和部門教授 間宮敬子